ノルトホルン・学校にて2012年11月18日 23時59分

きょうは日曜日なのですが、私たちが宿泊しているリバーサイド
ホテルにわざわざカウンティ(県)の交通部局長のクロスさんが
14時にいらしてくださることになっていて、ヒアリングは
ホテルレストラン辺りでしようかと考えていました。
(横浜国大・建築学の大原一興先生もヒアリング予定時刻直前に
無事にホテルに到着されました。)

ホテル内の移動だし、と軽装(スカート・スーツ)で行ったら、
クロスさんがあす視察予定の特別支援学校へこれからご案内します
とのこと。
想定外の申し出に、私たち4人は急いでコート、傘など取りに
部屋に戻り、恐縮しながらクロスさんの車に乗せていただきました。

学校は「フェヒタル シュール」(ヴェクタ谷の学校という意味)で
知的障害児童生徒の学校です。


こちらがエントランスからの通路。
日曜日なので、もちろん生徒は誰もいません。

通路の先にある吹き抜け空間の真ん中に、太い樹木のような柱が
ありますが、反対側に回るとこれがエレベーターになっていることを、
あとで校内を案内していただいたときに知りました。

クロスさんに案内された部屋(校長室?)には、何と3人の方が
待っていらして、私たちを笑顔で迎えてくださいました。
校長先生(女性)、副校長(男性)、そして教師(女性)です。
日曜日にもかかわらず、このご配慮にただ感謝感激です。
私の側から見て、一番左の方が校長先生、その右の方がクロスさん。

そしてパワーポイントを使ってのたくさんのプレゼンと、
丁寧な質疑応答をしてくださり、
用意していった録音テープ2時間分では足りないくらいでした。

そのあとは学校を隅から隅まで案内してくださいました。
学校は明るく、分かりやすい配置になっています。


学校にはあすも訪問します。
あすはきっと生徒たちに会えることでしょう。

私たちの本来の調査目的は、知的障害児童の通学における
公共交通活用のための取り組みです。
ここノルトホルンでは、公共交通を使った通学訓練をしていて、
世界的にみても素晴らしい取り組み内容なのです。
だからこそ、1年前から準備して、今回ようやく訪問を実現させたのです。
(詳細についてはのちに報告書で発表します。)

その前提となるバス路線図を、中村文彦先生がウェブサイトから引用し、
ブログで紹介されましたので、引用させていただきます。
世界中のバスとバス路線に詳しい中村先生です。

ヒアリングを終えて、ホテルに戻る前、クロスさんが車で街を
案内してくださいました。

「オランダ側のバス停には盲人用の白黒の点字ブロックがあるけど、
ドイツ側のバス停にはこういうのは付いていない」
との説明でした。(車の窓から写しました。もう暗い。)

本日は本当に親切にご対応くださり、ありがとうございました。

通学訓練等の視察2012年11月19日 23時50分

ノルトホルンにおける特別支援学校の生徒の通学風景と、
通学訓練の視察です。
ホテルから4人(中村先生、大原先生、私、大家さん)で歩いて
中央バスステーションに行き、朝7時半、クロスさんと合流しました。

ここはバスの乗り継ぎターミナルになっています。
同時間帯に複数路線が集約し、乗り継ぎがスムーズにできることを
タイムドトランスファー(timed-transfer)というのですが、
ドイツでもこういう場所は珍しいとのことです。

次々とバスがやってくるのですが、今朝はすごい霧です。

見ていると、子どもたちはスムーズに乗り継いでいます。
ヒアリングで教えていただいたところによると、生徒のうち約75人が
バスで通学しているとのことです。
私たちもバスに同乗させていただきました。
生徒以外にも一般のお客さんも利用していて、混雑していました。
特別支援学校の生徒たちが、乗車中、静かにきちんとしていることに
驚きました。

学校に到着し、まずは送迎サービスによる通学の様子を見学。
ミニバスタイプの車両で個別輸送サービスを行っているようです。


車に付いているオレンジ色の図は「通学バス」を意味しているそうです。

部屋に入り、きょうは県の交通部局長のクロスさんによるプレゼンを
最初に聞きました。
じつはこのクロスさんは、ノルトホルンのこの取り組みの
最大のキーパーソンなのでした。
私の向かいで聞いている左端が副校長、右端が校長先生、
そしてきょう新たに参加してくださっているブッシュさん
(真ん中の女性)もキーパーソンの一人です。
通学訓練や交通安全のための教材や教育方法を開発し、実践されています。

そのあと教室を回って教育風景を見学することになったのですが、
ここで大変なことが判明。

校長先生が「12時近くに、地元のテレビ局と新聞社が取材にきます」
と私たちに伝えたのです。

さあ〜どうしましょう。
私たち4人は、12時にはホテルをチェックアウトして、
18時の飛行機でデュッセルドルフ空港から次の目的地ミュンヘンに
行かなければなりません。

どうやら、国境近くの小さな街に遠い外国から交通の専門家が視察に
やってきたということが、地元では大ニュースだったようなのです。
前にカナダから視察にきたことがあるそうですが、
この取り組みに注目して日本から専門家がきたことは
大変名誉なことと受け止められたのでしょう。
とりあえず、バードベントハイム13時50分の列車に乗れば
フライトに間に合うことを確認して取材を受けることにしました。

教育訓練の様子、自転車の乗り方訓練の様子、ブッシュさんによる
教材や教育方法の説明などを受け、写真もたくさん写したのですが、
報告書で発表しますので、ここでは1枚だけ載せます。

次が、今回調査の目的の一つ、本物のバスを使っての通学訓練
(バススクール)の見学です。
専用の大型バスは学校敷地まで入れないので、隣接している広い
駐車場まで行きました。これがバススクールの車両です。

きょうの対象クラスの生徒は10人。
トレーナーの男性(地域の運輸連合のバススクールの専属担当)が
運転席からの死角(オレンジ色のマット内)や、バスへの乗り方など
説明します。
そして乗り方の練習。

運転士さんに定期券を見せること、ちゃんと座席に座ること、
最前列の席に座ったらシートベルトをすること、ボタンの押し方、
非常口の開け方など説明し、降り方の練習もしました。
急ブレーキをかけると、通路の後ろの床に置いたポリ箱が
いきおい良く前方まで滑っていく実験は、迫力がありました。

なお、定期券は顔写真入りで、県から無償で提供され、有効期限は
半年間、登校日のみ使えるゾーン制のものだそうです。)

教室に戻ったところで、マスコミの方がやってきました。
新聞社の取材を受ける中村文彦教授。
横の女性はきのうから対応してくださっている教師の方。
彼女は英語が堪能で、中村先生の英語をドイツ語に通訳して
新聞記者に伝えていました。

もう一回外に出て、テレビ局のためにバススクールの風景撮影です。
さっきとは別のクラスの生徒が来て、乗り方の訓練をしているところを
撮影していました。
(どこの国でもテレビ局が絵を撮りたいのは同じですね。)
テレビの取材を受ける中村教授。


このインタビューの映像は、インターネットテレビですでに
アップされています。

http://www.ndr.de/regional/niedersachsen/emsland/mogliprojekt119.html

ノルトホルンからミュンヘンへ2012年11月19日 23時55分

特別支援学校の調査はマスコミ取材により思いがけず長引き、
チェックアウトタイムを過ぎたホテルを急いで出て、
タクシー(ベンツ)でバードベントハイム駅に向かいました。
来るときゆっくり写せなかったバードベントハイム駅です。

バリアフリーになっていない列車を3回乗り継ぎ、
ミュンスター駅ではヒイヒイ言いながらスーツケースを持って
階段を上り下りしました。
でも帰りは手を貸してくださる男性の方が多くて助かりました。
デュッセルドルフ駅で見つけた点字ブロック。

デュッセルドルフ空港から、エアベルリンでミュンヘン空港に
19時到着(11月19日です)。
空港からホテルのある中央駅までは電車での移動となります。
S8の電車に乗っておよそ45分で中央駅に着きました。

泊まるホテルは駅構内にあるインターシティホテル。
構内というから駅からそのまま入れるのかと思っていたら、
一旦外に出ないと行かれません。
おまけに入口には階段があるではありませんか!
しかもスロープなし。エスカレーターもなし。
チェックインして部屋に行こうとしたら、廊下にも10段ほどの
階段があり、大ショック。
やっぱりスーツケースが大きすぎるのでしょうか・・

いつも世界中を回っている中村先生と比較してもしょうがないですが、
先生は小さなカバンと、衣類を詰めたちょっと大きめのバッグだけ。
あまりにも海外出張が多くて、もうお土産も買わないそうです。
私のスーツケースは、以前ドイツに来たとき購入したサムソナイトの
ガッチリしたものですが、もうタイヤはギコギコ言うし、
重くて動かしにくいし、帰国したら処分しようと痛感しました。

ミュンヘンには、横浜国大に業務がある中村先生が1泊、
大原先生が2泊、私と大家さんが3泊します。

ミュンヘン工科大学へ2012年11月20日 23時44分

ミュンヘンでの仕事は、ミュンヘン工科大学にヒアリングです。
昨年から、公共交通通学訓練プロジェクトに関する情報をくださっている
モンニンゲルさんに会うことになっています。
モンニンゲルさんは博士論文の研究で、知的障害者特別支援学校の
通学に関するプロジェクト(MogLi)を取り上げ、その成果を
私たち国際交通安全学会(IATSS)のこの研究プロジェクトチームに
提供してくださったのです。
しかも今回の調査に関するもろもろの手配も全部彼がやってくれました。

モンニンゲルさんは、最近、都市の公共交通が専門のコンサルタント
会社に就職され、頑張っていらっしゃるようです。

大学では、大変著名で偉い先生である交通工学がご専門のブッシュ先生が
私たちに直接会ってくださいました。
ブッシュ先生はミュンヘン工科大学の歴史や学部の内容、
研究チームの活動などについて、プロジェクターを使って
紹介してくださいました。

一段落したところで、軽食が出ました。
ノルトホルンの学校でもそうでしたが、軽食には写真にあるような
パンにハムや野菜などをはさんだサンドイッチが出てきます。
2箇所とも、アットホームな雰囲気でもてなしてくださり、
本当に感激しました。
左の方はスプランガーさん、真ん中の方がブッシュ先生、右の方が
モンニンゲルさん。
ブッシュ先生は、どこか岐阜大学での私の恩師・森杉壽芳先生に
似てらっしゃいます。
(というより、そっくりですね。)


ブッシュ先生とスプランガーさんが退席されたあと、
モンニンゲルさんがMogLiに関する、より詳しい発表をしてくださり、
びっくりするほど大きな成果が得られました。

県の交通部局長のクロスさんの、知的障害児童生徒の社会参加を
基本としたもろもろの提案がスタートで、連邦政府のプロジェクトとして
採用され、そこに3つの大学が関わることになったそうです。
ミュンヘン工科大学で請け負った部分がモンニンゲルさんの博士論文の
研究になったということで、全てがそこではっきりつながりました。
またMogLiプロジェクトがノルトホルンで実施できた背景には、
クロスさんの妻が知的障害児童生徒の送迎のミニバスの運転士を
されていることや、女性のブッシュさんを学校が引き抜いて雇用
したことなども大きな成功要因としてあるようです。